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「俺が無いかと聞いたのは、ケントルググ草。
一般では知られてはいない、一部の獣人達が好んで使う、黒い茎のような草だ。
普通人が心臓発作に使うのは、丸い葉の、多様性のあるリビダヤ草で、多くに知れ渡っているのもそのリビダヤ草だ。
……この意味が、判るか?」
その反応を見て、まだ熱いビーカーの中に、削った石の粉末とドライフラワーの花びらを二枚だけ入れる。
――その途端、水のような状態だったビーカーの液体はどこかドロッとしたものになり、それと同時に、やや透明の、濃い紫色へと変貌した。
その見た目は薬とは言いがたい状態のものに、アーゼンは頬をひきつらせた。
「……なあ、メイ君、君は一体何の薬を作っているんだい?」
「…特効薬ですよ。効力は非常に強い。
逆に言えば、これは長時間は効かない、本当に一時的な、不思議な薬です」
そう言って、紫色の液体を何重かに重ねているガーゼで包み、絞る。
不純物が無くなったからなのか透明度が高くなったが、その液体はまだドロドロとしている。
その毒々しい紫色の液体の入ったコップを、メイはアーゼンに差し出す。
「さあどうぞ」
「……ちょっと待ってくれ、何故私に渡す?」
「大丈夫。毒じゃない」
「いや、もう少し理由を――がもが!」
差し出したが躊躇っていたアーゼンに、有無を言わさずメイは無表情のまま、口の中に無理やり毒々しい薬を突っ込んだ。
しかも飲ませやすいようにと、いつの間にか用意していた漏斗を素早く先に口の中に入れてまで。
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