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「……一つ、変なことを聞いても良いか?」
「何?」
「アリアには、こいつが見えるか?」
そう言って、メイが指を指すのは、何もない空間。
あるとしたら、少し遠くに花が咲いているくらい。
「…残念だけど、その先にある花しかわかんない」
「……そうか。期待はしていなかったからまあいい。
属性を教えなかったのは、変な先入観を入れないためだ。
属性付きのものは、もう少し後で教える」
私に向けていた視線は、すっと前の方に向き直される。
「まだ、後もう少し」って呟きが、どこからか僅かに聞こえた気がした。
メイには私には見えない何かが見えるらしい。
それが魔法に何の関係があるのかは判らないけど、一つ判ったことはメイもうマジで主人公スキル持ってんじゃないか。
そのままメインで行ってしまう?
……けど、ヨウラに頼まれたのは私なんだよね。
何もない空間で、涙と鼻水を垂らしながら情けなく謝っていたヨウラ。
巻き添え食らったのが私って言うだけなんだけど、受け持った以上、とにかくやろう。
――こうして、私に課せられた初めての仕事が、始まろうとしていた。
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