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夏夜は俺にとって言うまでもなく特別な存在だ。
それは一生変わらないと、根拠はなくとも思える。
それくらい特別で、かけがえのない。
それが夏夜だ。
俺達の関係が、幼なじみとして依存の仕方や形が歪な事くらい知っている。
それは相手だって気づいてるはずだ。
知っててやめない、切らない。
お互いがお互いの影になってようやく、いつもの俺たちは成立する。
本当に感謝している。
でも、謝りたい事もたくさんある。
15年間ずっと傍らにいた存在はあまりに大きくなりすぎていて、時々他人事のように驚くが、これが俺達。
……だと、俺は思っている。
――――――――
病院の廊下を、小さな花束を持ちながら静かに歩き、約4分。
受け付けを済ませ、エレベーターに乗り、3階へ上がって、一つ角を曲がって突き当たり。
そこが、夏夜の病室。……いや、だった場所。
トントンとノックすると、小さな声がどうぞ、と返してきて、俺は扉を開けた。
「夏夜、今日で退院だな」
言葉は冷静なものの、俺の表情はきっと凄く綻んでいた事だろう。
今日、2月最後の日。
夏夜は2年と10ヶ月の月日を経て、ようやく退院をする。
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