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「ありがと、征ちゃんっ」
俺の表情を見て、ぼうっとしていた夏夜の顔に笑顔が灯った。
「準備出来たか?」
「うん、あとは本を入れれば完了っ」
にへっと笑う、いつも通りな彼女に嬉しくて、早く荷物を持ってあげたくて、一度花束を置いて、俺も、夏夜が大量に持ち込んでいた文庫本を鞄に詰めていく。
「しっかし、よくもまぁ、こんなに持ち込んだよな」
バラバラなジャンルの本達を見て、改めて入院生活がいかに長かったかを実感し、ほっとした。
今日からはまた、3年ぶりの、夏夜がいつもそばにいる生活が始まる。
どれくらい待ちわびた事だろう、と思っていると、それは夏夜も同じだったようで、
「これでよーやく、征ちゃんと普通に会えるなぁ」
と彼女が言った。
その顔は、とてもキラキラしていて、俺はふっと笑うと、最後の本を鞄につめて、持ち上げた。
「え、いいよ征ちゃん、私持つし」
「いや、俺が持ちたいんだ、だから夏夜は花束だけでいいよ」
慌てて俺から鞄をとろうとする夏夜の手に、置いてあった向日葵の花束を鞄の代わりに持たせると、俺はもう片方の手を差し出した。
「…はは、照れるなぁ」
意味がわかったようで、夏夜はそう言いつつも俺の手を握った。
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