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ブロック塀に囲まれた狭い路地に伏せた変死体は、骨や筋が浮き出る程痩せ細り、土気色の肌は、燻製の様に乾燥している。
一見すると、テレビによく出るミイラの様だ。
ビジネススーツ姿のミイラという現実離れした代物が、何処にでもある住宅街に現れたのだ。
十年、刑事を続けたこの警官も、こんなヤマは、見た事も聞いた事も無かった。
「吉川警部補。宜しいですか?」
吉川と呼ばれたこの刑事は、若い警官に呼ばれ、我に返る。
この場合、捜査の途中経過の報告である故、聞かないわけにはいかない為だ。
「小早川、どんな状況だ」
吉川は、既に上司の顔になり、小早川と呼ばれた若い警官に尋ねた。
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