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「ガイシャの遺留品から、身元は北見修平。本部に照会したところ、日星商事の会社員との事です」
「北見修平……ねぇ」
吉川は、小早川の報告を聞くと、何処か含みのある独り言を零す。
小早川は、そんな吉川を見て、少し怪訝な表情になる。
「……と、言うと?」
小早川は、腑に落ちない様子で、尋ねる。
すると、吉川は、小早川に言い聞かせる様に、口を開いた。
「よく見てみろ。こんな変わり果てた顔で、本人だって断定出来るのか?まだ鑑定も終わってないのに?今の段階じゃ、替え玉の可能性だって捨て切れないぞ?」
吉川にそのつもりは無いのであろうが、何とも棘のある言い方である。
小早川は、一瞬ムッとした表情になると、少し口答えをした。
「すいません。しかし、他の先輩はこれで良いと……」
「は?誰が言ったか知らんが、他の奴は他の奴。今は俺が上司だ。分かったか!!」
「すいません……」
小早川のささやかな反撃は、あっさりと封じ込められた。
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