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清潔感のある白い門から現れたのは、二十代半ばのスーツ姿の短髪の青年である。
街灯に照らされた、スラッとした長身の青年は、雨模様の夜というジメジメした空間に似合わない程、爽やかな笑顔を見せている。
根暗な雰囲気を醸し出すレインコートの男とは、真逆の印象であった。
「今日は、ありがとう。楽しかったよ」
優しいトーンの落ち着いた声が、辺りに響き渡る。
そして、青年の声に吸い寄せられるかのように、門の中から若い女性が現れる。
女性は、笑顔で、青年に開いた黒い傘を手渡した。
「こちらこそ、ありがとうございます。修平さん、お気をつけて……」
「あぁ、ありがとう。それじゃあ、お休み」
お互いに、一言二言挨拶を交わすと、青年は傘を受け取り、雨の住宅街に消えて行った。
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