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男が呪文の様なものを唱えると、街灯の反対に伸びる男の影の胸の辺りが、盛り上がってくる。
それは段々と球の様になっていき、完全に黒い球形になると、本体である大きな影から、切り離された。
「僕は、魔法使い。僕に出来ない事等ない。ヒヒヒ…」
男の不気味な笑い声に同調するかの様に、球形はゆらゆらと宙に浮き上がる。
それが、男の頭位の高さになると、今度は、黒い塊が、歪に形を変形させ始めた。
「行け。僕の清美を誑かすあの男の血を吸い尽くせ」
男がそう言うと、黒い塊は、バレーボール程の大きさの蝙蝠へと姿を変え、闇の中へ飛び去って行った。
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