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桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちて、私の目の前はピンク色のジュータンになっていた。
いつもと変わらない。
だけど、春は嫌いだ…
寒いわけでも、暑い訳でもない丁度いい気温の春なのに、私は好きになれない。
思いだすから…
春になると、思い出してしまうから…
「よっ武内」
後ろから、名前を呼ばれゆっくり振り向いた。
「あー、春くん。おはよう」
それに、続いて
「おはようございます。木内先輩。」
「オッス!」
佐々木春(ささきしゅん)くん。
春くんは、私がマネージャーをやっている男バスの副部長の1人。
高い身長、完璧なルックス、話しかけやすい性格。
完璧男っていうのは、きっと春くんのことをいうのだろう…。
学年の女子人気ランキング2位のモテ男。
で、3年で部長の木内圭太(きうちけいた)先輩。
「よっ、ここで何やってんの。」
「おー、光一。朝練今日はちゃんと来たか」
木内先輩が満面の笑みを見た。
「今日はって、俺いつもきてますよ」
「あー、わりぃ。でも、こないだ遅刻しただろ」
「それは、たまたまですよ」
「まぁ、分かったから。いくぞ」
「ほら、武内も」
「あっはい」
止めていた足を前に出し、歩き出した。
真山光一(まやまこういち)
学年女子人気ランキング1位のモテ男。
春くん以上に高い身長、スッとした体型、、完璧すぎるルックス…
バスケの才能は飛び抜けている。
謎めいた感じも人気の理由の1つ…
「もーすぐ、試合だし気合いれて練習するように、いいな」
「はい」
バスケ部全員が気合の入った返事をして、朝練が始まった。
マネージャーになって、一ヶ月。
このバスケ部の人たちともだいぶ仲良くなった…
気がする…
唯一…
真山とは会話をしたことがない…ような。
ードン、キュッ
体育館にバッシュの摩擦音が響き、同じくらいのペースでボールの鈍い音が耳を通る。
「オイ、そこ!ちゃんとやれ」
木内先輩の声が体育館のバッシュやボールの音をかきけす
そして…
「「「はい!」」」
みんなの返事が一瞬にしてまとまり、またあの音が耳を通る。
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