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「博士、……」
「ん?何?」
博士は首を傾げて笑った
目は濁ったまんまだったけど
「博士、……」
ありがとうございます
私を作ってくれて
私に心を与えてくれて
未熟でどうしようもないあたしの心だけど……
博士の研究は成功したよ
心の研究、大成功だよ
だってあたし、やりたいって思っちゃったんだもん
やらなきゃって思っちゃったんだもん
「あたしは地球に残ります」
「博士は宇宙ステーションに乗ってください。あたしはロボットだから、ロボットとして地球に残ります。博士と別れるのは寂しいですが、……。愛してるんです。あたしが生まれたこの地球を、博士と過ごしたこの家を」
あたしは話し続けた
博士がずっと黙っていたのはわかっていたけど、止めることはしなかった
とめどなく溢れてくる思いがあった
洗濯物を乾かす穏やかな太陽の日差し
大地で育った美味しい作物
市場で懸命に同じことをするロボット達
そして、博士との……
苦しかった
悲しかった
でも、もう我慢はしない
終わるって分かっていても
それでも全てが愛おしいから
どうしても止められない温かいものがあたしの中を駆け巡っている
思いを全部を吐き出した後、あたしはもう一度言った
「あたしは地球に残ります。博士は宇宙ステーションに乗ってください」
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