1人が本棚に入れています
本棚に追加
¨
机の上に、りんごがある
真っ赤な、それでいてみずみずしいりんごが一つ
それを少女は眺めていた
右から、左から、前から、後ろから、上から、…
少女はりんごを手に取り、傾けて下からも見た
どこにでもあるようなりんご
なんの変哲もないりんごを、まるで物珍しいものを見るかのように、楽しそうに少女は見ていた
周りには誰もおらず、少女の行動を咎める者はいない
はたから見ると異様なその光景も、だれも見る者がいないのだから、それには分類されない
しばらくりんごを眺めていた少女は、手を止める
口を開けて、それを口元に持っていこうとした
「食べちゃダメ!」
少女以外は誰もいないはずの部屋
そこには先ほどはいなかったはずの、小さな男の子がいた
彼の視線は少女の手にあるりんごに注がれている
少女はりんごから視線を外し、男の子を見る
少女は一瞬、彼に笑いかけた
しかし、時間が少しも経たないうちに止めていた手を再開させ、少女 はそれを一口かじった
.
最初のコメントを投稿しよう!