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「あーあ、食べちゃった」
彼は残念そうに言う
眉は垂れ下がっている
「うん、そうだね」
対する少女は、しれっと興味なさげにそれに返事する
男の子を見るわけもなく、少女の視線はりんごに戻っている
一口かじられたりんごはすでに少女の手にはない
もともとあった机の上に置いてある
少女は楽しそうにそれを眺めていた
制止を聞かず、自分に見向きもしない少女
男の子は思わずムッとする
眉間にしわを寄せ、整っていて可愛らしいいつもの顔は歪んでいた
たしなめるかのように、低く押さえたような声を出す
「りんごの皮には、農薬が沢山ついてるんだよ?」
りんごを眺めていた少女はそれを聞いて、何を思ったのか、視線をりんごからはずした
体の向きを変えて、男の子に向かい合う
「知ってる」
少女は笑っていた
綺麗に綺麗に笑っていた
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