1人が本棚に入れています
本棚に追加
¨
「いらっしゃーい!」
「奥さん、魚が安いよ?」
「そこの兄ちゃん、買っててー!」
市場の朝は、賑やかだ
沢山の人達で賑わっている
客引きの元気に比例するかのように、道は人で埋め尽くされている
少女は人混みの中で人を避けながら進む
ちょうど市場の中ほどまで行くと、果物が並ぶ店に着いた
その場で少女は立ち止まる
昨日と同じ場所で存在を主張するりんご
少女はそれを手に取る
「あっ、ジョーちゃん!今日も買ってくのかい?」
顔見知りのおばさん、もといその店の主は、少女に気付くとにこやかに話しかけてきた
「うん。一つちょうだい?」
何回も繰り返したお金の受け渡しを終える
目的を終えて店を去るとき、おばさんは再度口を開いた
「ご主人にまた買って下さいって伝えとくんだよ」
決められた営業トークも、優しく大らかに見えるおばさんに言わせると様になる
決して嫌みに聞こえない
返事の代わりに微笑みを返し、店から離れた
彼女を作った人は、センスがいいな
店を去る時にこう思うのも、何回目だろうか
.
最初のコメントを投稿しよう!