サイド未来

3/6
前へ
/26ページ
次へ
大きな看板のある交差点。雪は五センチ程度。熱で解け始めた雪の表面はエナメルのようになめらかに輝く。太陽の逆光をバックに現われる男。見おろす先のその地面。 女は血を流して倒れている。 「くくく」と響く笑い声……。 「大きな看板」に見覚えがあった。その交差点を知っている。場所は特定できた。 だから私はこの日、学校を休んだ。 金曜日、授業は少ない。普段私は優等生なので単位は足りている。 私の場合、たんにズル休みというわけではないので、どこで見ているのかもわからない神様という存在(いるならば!)とやらも黙認してくれることだろう。 この場所で起きることを見届けたい。止められるものなら止めたい。 それが今の私の心境。 「なるべくなら血は見たくないな……」 視えて心地良いものではない。血というやつは。 午前十時半。 空の様子を見る。 朝のうちに雪は止んでいた。 「そろそろかな……」 太陽の角度、光度が未来視で視た太陽と重なる。雪の表面は徐々に解け始めエナメルに輝く。人通りはざっと見、二十人から三十人。目撃者はこれだけある。この人数が急に消えることはありえない。白昼堂々あまりにも大胆な犯行となるだろう。 さあ、来い。 私は周囲に最大限気を配った。 どんっ。 「え? 」 それは唐突過ぎる衝撃。 背中に誰かがぶつかった。 私は背中に異物感を感じながら前のめりに倒れた。 ああ……。 視た事のある光景だ。 私は私の背中を鋭利な刃物でノックしたであろう男を見上げた。 逆光に顔は見えない。 頬に雪が冷たい、その冷たさを打ち消すほどの熱さは、心臓の早鐘。 ああ。 どくどく、と。 私は気づいた。私は私が刺される未来を視たのだ……。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加