act.1 こんにちわ現実逃飛行

2/12
前へ
/14ページ
次へ
最寄り駅から徒歩10分、ビルとマンションに挟まれる形で庭園学園はそこに建っている。学園と名が付くが別にマンモス校というわけではなく、正式名称は『庭園学園大学付属高等学校』で全くの私立校だ。偏差値は大体47から50の、成績からしてそこそこ頭のいい学校であることは確かである。 今年から高校1年である嬉野哀歌(うれしのあいか)は、この学校に通ってもう2ヶ月だ。友人は数えれる程度で、特にこれと言って目立ったこともない普通の男子高校生で、変わらない日常に「つまらない」「退屈だ」とぼやきつつもその在り来たりな生きているという幸せを当たり前のように噛みしめること早16年。ルーチンワーク化した学校登校はやはり、いつも通りだった。 いつも通りの筈だった。 @ 嬉野は迷っていた。 目の前に差し出された右手を取るか否か、彼は迷っていた。色白い右手を差し出す目上の人間は、薄いエメラルド色の髪を揺らしながら微笑んでいる。 時間を遡ること約数時間前。嬉野の登校時間となる。彼は何時ものように自宅から自転車で駅に到着、そこから学園の最寄り駅まで電車に揺られ、最寄り駅で降りた。あとは歩くだけである。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加