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その歩くという作業中に、事件は起こった。語弊を招く言い方だが、嬉野にとったらその出来事はまさに事件そのものなのだ。
駅から学園までは、綺麗に補強され直したアスファルトの道に飲食店やファーストフード店が立ち並ぶ。車が上りと下りで二両通り抜けるなか、嬉野は交差点で信号待ちをしていた。両耳にイヤホンをつけて音楽を聞いている嬉野に、その音は鈍く聞こえにくかったのだろう。
“……て”
車輪の擦れるような音がする。だが気のせいだろう。どうせ自転車のブレーキが壊れているんだ。
“……て!!”
甲高い声が聞こえる。どうせそこらへんの女子が騒いでいるんだな。
“…いてっ!”
――――この甲高い声と車輪が擦れる音が、段々こっちに向かって聞こえてくるのは何故だろう。嬉野がそう思い、片耳のイヤホンを外した。そうしてふと、横に振り向くと。
「うぎゃああぁあぁああああぁあああどいてぇええぇえええっっっ!!!!!!!!」
涙目になった少女が自転車で爆走してこちらに向かって来ていた。
派手な音を響かせて、自転車は乗っていた人物と共に歩道の端に投げ飛ばされた。嬉野はその反対方向へとへ吹き飛ばされる形で横たわっている。
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