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おそらく、直前で自転車のブレーキが効いたのか。嬉野も、相手も怪我はなかった。
しばらくして気がついたのか、嬉野が頭を振り埃を払う。痛む頭を押さえながら自転車の持ち主が吹っ飛んだ方を見ると、どうやら持ち主も意識を取り戻したようで身体を起こしているのが見えた。
身体のあちこちが痛むが、別に病院沙汰ではないので嬉野はそのまま立ち上がり相手に会釈して立ち去ろうとする。変に関わって事態をややこしくしたくないし、慰謝料などと金問題まで行きたくなかったからだ。しかし嬉野の思惑と裏腹に、自転車の持ち主である少女は慌てた様子で嬉野に声をかけた。
「あ!ちょ、待って!!」
嬉野はぴたりと立ち止まり、怪訝そうな表情で少女の方へ振り向いた。
「…………何ですか。あ、病院とか大丈夫なんで」
「違うわよ!……君、庭園学園でしょ」
「……まぁ」
制服を見てわかったのだろう。しかし少女は嬉野の恰好に突っ込みを入れることはなかった。
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