2.誰の子?

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 英知はつらそうに顔を下に向けた。 「お母さんは、楓のことを認めていないようでかなり嫌っています。だから、叩いたり蹴ったり、時には言葉で責めるときもありました」 「英知さんはお母さんのその行動が嫌だと思わなかったのですか?」 「嫌ですよ。しかし、それを口に出せば今度は自分がやられます」 とても小学生とは思えない発言だった。こんなにも礼儀が正しいのはきっと母親にしつけられたからだろう。そして、それが出来なければどうなるのかもきちんと知っていた。 (楓を守りたい。でも、どうすることもできない)心の中にはその想いが強かった。ここでようやく瑠璃が口を開いた。 「そうだよね。自分がそういう目にあったら嫌だよね。じゃ、代わりに楓ちゃんがそんな目にあっても仕方ないんだよね?だって、英知君は逃げているだけだから」瑠璃は内心残酷だとわかっていながらこの言葉を口にした。ますます英知の顔がつらそうになる。 「瑠璃さん、言いすぎです」神楽が注意したが、瑠璃は聞かなかった。 「それは...」瑠璃はきつい口調でまだ続けた。 「解決方法が見当たらない。本当に見当たらないの?一生懸命考えるだけが手段ではないと思う」遂に英知が怒った。 「いい加減にしてください!僕が何をしたのですか?何もしていない。何で僕を責めるのですか?」瑠璃は優しい声でこう言った。 「貴方が楓ちゃんのお兄さんだから。楓ちゃんを守ってあげるのも兄としての仕事だから。英知君自身も楓ちゃんを妹と見てなかったんじゃないのかな?」 「...」 「ちゃんと自分自身と向き合ってみて。私が言えるのはそれだけ。きついこと言ってすみませんでした」そういい残し、家を出た。
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