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「はいもしもし井川ですが」と優しい綺麗な女性の声がした。神野は落ち着いた声で話しを進める。
「初めまして、警視庁の神野というものですが、今現在娘さんの楓さんを松山のほうで保護させてもらっています。楓さんを迎えにきてはくれませんか?」これで解決する。そう思っていたが、次の一言はとんでもないことだった。
「楓?そんな子知りません。私の家に娘はいません」神野は思わず耳を疑った。
「はい?いえ、楓さんが家の電話番号を教えてくれたのでここで間違いないと思うのですが」
「そのこが間違えたんじゃないのですか?私は忙しいので」と切られてしまった。
楓の目に涙がたまっていく。今にも泣きそうな顔なのに泣かない。
「参ったなぁ」と神野はつらそうにため息をついた。
「お母さんは私のこと嫌いなんだ。知ってるもん。いつもいらない子って言われてたから」つらそうにその小さな口で楓はそういった。瑠璃は思わず、楓を抱きしめてしまった。
「つらかったね」頭を優しく撫でてあげるとすぐに泣いてしまった。抱っこをしてあげるといつの間にか眠ってしまった。
「しかし、親が子供を無視するとか変な世の中になったな」と烈火は不機嫌そうに言う。
「そうだね。とりあえず、お父さんの会社に電話させてもらおうか」名刺を片手に持ちながら神野は言う。とんだ旅行となってしまった。
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