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テーブルの上には、ベッドで直に眠りに落ちるであろう峰岸ケンジのガラパゴスケータイが放置してあった。
山崎エリナは、まるで犯罪の容疑がかかった者が出頭命令に大人しく応じて、刑事の前にやってきた様に似ていると思った。
えぇい! 神妙にしやがれ! 意気込みはそんな言葉を口から吐き出す程あるのに、呆気ねぇなとも感じていた。
山崎エリナは、テーブルの上に置かれているケータイを手取った。
その二つ折りのガラパゴスケータイは所々色が剥げていて、iPhone4sを使用している山崎エリナのケータイと違いクラシックな雰囲気を放っている。
峰岸ケンジは以外にも物持ちの良い男なのかもしれないと思ったが、今はどうでもいい。
結果次第では、数分後このガラパゴスは真っ二つになる。
山崎エリナは、容疑者峰岸ケンジの携帯電話をゆっくりと開く。
耳の後ろに心臓が移動したかのように鼓動が大きく聞こえる。
以前の記憶が蘇り、心臓を堅く握り締める。
大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせる中、ディスプレイは無情な文字を映し出した。
【暗証番号入力】
その文字を見た瞬間に山崎エリナは理解した。
以前と違い、ロックをかけている。=やましい事を隠していると。
なんて野郎だ。
そう言えば、怪しい事が多かった。
何故スロットに行くのに、いつも穿いてるクロックスじゃないのか。
峰岸ケンジから香った柑橘類のようなボディーソープの香り。
何よりも普段よりも薄かった。
証拠は全て出揃い、一つの答えを導き出した。
峰岸ケンジは黒だ。
山崎エリナは、奇声を発しそうになる口を必死に噛み締めた。
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