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二人は、中学高校と同じ学校で学生生活を過ごした友人である。
共にソフトテニス部に所属していた。
所属はしていたが、決してテニスが好きだった訳ではない。
単に、ユニフォームが可愛かった。そういった不純な動機である。
確かに、テニスウェアを着た女子ソフトテニス部の太股は、思春期真っ只中の男子中学生を相手に向かうところ敵無しだった。
地味な眼鏡ちゃん、山崎エリナも“チーム無敵”の先鋒として最前線を駆け抜けた功績を今に残している。
だが、本業のテニスはと言えば、奇しくも二人の中学校は皆、市内大会初戦敗退の結果に終わった。
そんな中学生時代から、大村カエデは一際目立ちたがり屋で、姉御肌を気取っていた。
クラスの男女の中心に立ち、良くも悪くも話題を常に発信し続ける女。
体育大会や修学旅行などの時には、三十人以上の生徒達を纏める、まるで大物司会者のようだった。
そして、 鼻の形は悪いものの、モテていた。
テニスウェアを脱いだ山崎エリナとは大違いである。
そんな大村カエデは意外とも言える一面も兼ね備えている。
悲しい時、寂しい時はいつもドリカムを聴いて、まだ小さな子供のように泣いていたのを、山崎エリナは知っている。
それを影でいつも笑っていた。
だが、嫌いだという感情は殆どない。
高校を卒業し、それぞれ違う道を歩み出したものの、いわゆる親友という関係を保ち続け今に至る。
今日は買い物の途中で立ち寄った大手ハンバーガーチェーン、マクドナルドで若者達に紛れ込みながら、三十路目前のフリーター二人がポテトと時間を食い潰している。
そして、何よりこの眼鏡を通し眼球へと写り込む女は、峰岸ケンジを話のネタに、ストローの末端部をガシガシと噛み砕きながら、悪等退治するヒーローにでもなった妄想に浸り、この下らぬ人生を一瞬だけとは言え、謳歌しているつもりなのだと、山崎エリナは感じ取っていた。
山崎エリナの心に憎しみが芽を出したのは、言うまでもない。
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