鈍色の出逢い

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 カラフルなペンの並ぶ窓際の棚に、西日が差し込む。  そして徐々に店内が赤く染まっていく。   「じゃあさ、こういうのはどうだろう」  今にも泣き出しそうな顔をした少女を見ながら、彼は提案する。   「今回のことは見なかったことにしてあげる。だからさ――」  彼が彼女に示した、妥協案。   「――代わりに、俺とデートしない?」  それは、常識とはかけ離れたものだった。   「……えっ?」  消え入るような声で、少女は聞き返す。    最悪な出会いと、愚かな提案。  それが、二人のファーストコンタクトだった。
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