鈍色の出逢い

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「来たくなかったよ!でも、だって、来ないと……」  語尾はごにょごにょと力なく萎んでいく。   「うん、そうだね。愚問だったね。ごめんごめん!さっ、何処行く?」  彼は笑顔でそんなことを聞いてくる。    彼の、私の気など知ったことではないという態度が、気に障る。   「別に何処でも良い」  早口に告げると、彼は困った風な笑みを浮かべる。   「うーん、何でも良いが一番困るんだよね。じゃあ、候補を挙げよう!」  そう言って彼は指を三本立てる。   「1つ、美術館。2つ、水族館。3つ、博物館。さあ、どれ!」  彼の『絶妙』過ぎるチョイスに、思わず頬が引き攣る。
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