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熱帯夜の深夜1時42分。
世界がぐにゃりと歪み溶け混ざり壊れた。
重力も、あらゆるものの価値も、常識も、全て失われた。
世界で1位をとる夢も、上司の愚痴も、お店を開く目標も、告白する勇気も、全て失われた。
一体、なぜこんなことになったんだ。
記憶をたどってみる。
確かに私は思った。
こんな世界、壊れてしまえばいい。
でも、世界は、私が思って壊れるなんて、そんな風にはできていなかったはずなんだ。
でなければとっくに世界は滅びているはずだ。
それともなにか。
世界の崩壊を望んだ最初の人間が私だとでも言うのか。
そんなはずない。
世界には不幸が満ちあふれているのだ。
多くの人間が望んだはずだ。
こんな世界、なくなればいい。
私は望んだ人間の1人にすぎない。
多くの人間が望み、そして世界はそれに負け崩壊した。
ただそれだけのことだ。
私は何も悪くない。
美しいのか醜いのか、それすら判別できない、混ざり合う沢山の色。
もう何日も人と話をしていない。
それどころか、人の姿すら見ていない。
そうか、世界が崩壊するというのは、とても寂しいことだったのか。
私は会いたい。
私は話したい。
私は生きていたい。
心から願った。
世界がぐにゃりと動き始めていた。
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