光の輪

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―――――――――――――― 8月20日 雷雨 朝から激しい雨なり。 副官代理の瀬川少尉、化け物を数十匹狩って意気揚々とす。  もはや戦争どころではなくなってきた。 我々陸戦隊のポートモレスビー攻略作戦もこのままでは失敗の恐れあり。 各隊とも一切の連絡とれず、他隊も化け物の襲撃を受けたものと推測す。 ――――――――――――――  化け物とは恐らくさっきの皮を剥がれた人間の事であろう。そんなのを数十匹も殺した瀬川という少尉は最後どうなったのだろう。  そんな事を読みながら考えていたが答えがでる訳もなく、日記を読み進めるしか今の原田にはできなかった。 ―――――――――――――― 8月23日 ザライス・ラバタ・ガニラヌメ ―――――――――――――― 「なんだ、これ?」  少尉が不審そうに覗く。確かに今までの日記の内容とは明らかに異なっていた。天気の記述もない。 「少尉、現地語ですか?」 「いや、こんな言葉は見た事がない」  次の日を見るとページ一杯にぐちゃぐちゃの線が書かれていた。また次の日も同様であった。 「狂っちまったのか…」 「無理もないですよ、あんなのと毎日戦ってれば気も狂いますよ」  だが、次のページをめくると、いつも通りちゃんと記事が書かれていた。 ―――――――――――――― 8月36日 灰 灰、こう表現するのが正しいのかもしれない。 もう3日もこの灰の様な粉が降りしきる。 非常に気味が悪いがもう慣れる。 我が軍も敵軍も踏み行ってはならぬ地へ入ってしまった。 作戦を根底から見直す必要あり。 ―――――――――――――― 「一体、この将校は何を体験したんだ。ただ事じゃないぞ」 「ええ、しかし日記ここで終わってます。おまけに氏名も何も書いていないのでこれ以上の詮索もできません」  手掛かりの日記が不可解な記述を残して終わった今、原田達にできる事はただひたすら進むだけであった。 「明日は西川原少尉の墓を掘り返します」 「西川原?どっかで聞いたような名前だなぁ…まぁいい。とにかく掘りゃいいんだな?」  原田は頷くと、その場に倒れる様に眠った。疲れていない訳はない、ニューギニアに赴任してきてから殆どまともに休んでいなかったからだ。
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