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3時間後――
「おい、原田、起きろ」
「は…はい?」
「村の連中は総出で狩りやら農業やらに行ってるから掘り返すなら今しかないぞ」
原田は飛び起きると、背嚢から円匙を抜き、西川原少尉の墓を探し始めた。
「なぁ、その西川原ってのはなんで死んだんだ?戦死か?」
「確か、戦闘中に突然発狂死したとかで…」
「まったく、どいつもこいつも…」
西川原少尉の墓は案外簡単に見つかった。それは、土饅頭に日本軍の鉄兜やら拳銃が刺さった粗末なものであった。
「これが本当にその少尉の墓なのか?」
「確証はないですけど、どんなに見渡しても墓はこの位しかないので…」
持ってきた円匙で土饅頭を崩していくと、死体ではないが何か小さな金属が現れた。
「首飾り、だな」
少尉がその首飾りを引っ張るが、どうしてかなかなか土の中から出てこない。
そこで首飾りと土の隙間に円匙の柄を入れて、思い切り二人で引いてみた。
すると驚くべき事に、首飾りと共に人間の上半身がムクリと起き上がってきたのだ。
「お、おい…こいつが西川原ってやつなのか?」
「た、多分…」
原田は西川原を見たことはもちろんなかったが、持っていた手帳に「西川原充司」と記名したあった為、すぐにその人だと判断できた。
西川原は原田達が戦った、皮を剥がれた敵兵のそれとまるで同じで、彼にも何か普通とは違う死に方をした事は間違いなかった。
「やっぱりな。そんな事だと思ったよ」
「えっ?」
「ほら、ここに紙切れが」
少尉が西川原の陸戦ベルトに挟まっていた紙を抜いて広げた。原田が中を見るとそこに書かれていたのは143警将校の日記の続きであった。
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