光の輪

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―――――――――――――― 8月45日 光 我々はついに辿り着いた。 原住民の言う「光の輪」の入口で訓示を述べる。 捜索隊、当初の人員の半分になるも任務達成せり。 母さん、こんな所で果てる不敬な息子をお許し下さい。 あの世で必ず孝行します。 ですからもう一度母さんのぼた餅食べさせて下さいね。 時子、お前には迷惑をかけるな。ただ、夫死せども帝国海軍軍人の妻であることは変わりない。再婚するも独りでいるも好きにするがいい。 とにかく幸せになりなさい。 だが、お前達の為に戦った私の事だけは忘れないでくれ。 本日8月45日を以て我が143警主力捜索隊は修羅の庭に突入す。 当然、生還は期せず。 それでは、愛する人よさらば。 天皇陛下万歳。 ―――――――――――――― 「こ、これは…」 「日記の最後のページだ」  2ページに渡って書かれたこの日記には「光の輪」「修羅の庭」と言う不可解な単語が書き込まれていた。 「この修羅の庭と言うのはなんでしょう」 「ンダリ・ゲニソカ」  2人の後ろから先程の曾長が歩み寄ってきた。曾長は「ンダリ・ゲニソカ」と言う単語を繰り返した。 「カダマ・チュワハ?(何だそれは)」 「キリスナ・クタリエヌ(神の領域の事だ)」 「少尉、そう言えば、ンダリ・ゲニソカって少尉が最後に辿り着いた場所ではありませんか?」  少尉は、ハッとしたように原田の顔を見ると、また曾長に向き直った。 「ハナカダ・ザライス(では光の輪とは?)」 「キリスナ・ザライス・サハレバタ(修羅の庭への入口の事だ)」 「カイタ・ナガヤダ・ヌハ(わしの仕事は神に戦士を捧げる事)」 「サア・ツフレキ・ナヤタ(お前達2人からは強い戦士の香りがする)」  少尉は瞬間的に危険を察知すると、原田の腰から手榴弾をむしり取り、近くの民家に投げつけた。 「走れ、走るんだ!!」  その声と同時に手榴弾が炸裂し、中から武装した化け物兵が躍り出てきた。 「やっぱりじじいグルだったみたいだ」 「原田!!引きつけて1人か2人やるんだ!!」  原田は背中に掛けてあった小銃を素早く構えると、照準を先頭を走る化け物に合わせ、引き金を絞った。それを見事に撃ち倒すと、さらに続けて曾長の頭にも風穴を開けた。
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