光の輪

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「あなたは…斎藤兵曹!」 「久しぶりだな、原田」 「この人は?」 「舞9特の特殊狙撃第一分隊の分隊長です」  身長が180センチもあろうかというこの大男は「斎藤兵曹です」とにこやかに少尉に挨拶すると、真面目な顔で原田に向き直り、一枚の紙を渡した。 「これ…は……」 「錦司令がお前にと」  原田は青ざめた表情で何度も何度もその紙を読み返すと小さな声で「嘘だ、嘘だ」と呟いていた。 「大丈夫か、原田?」 「み、み、見て下さい…これ」  引きつった笑顔で目に一杯の涙を溜めたこの少年は少尉に紙を手渡した。 ―――――――――――――― 八月五十六日 十六時四十二分 私はついに海軍が追い求めていた「修羅の庭」の入口へと辿り着いた。 我が軍がこの戦争に勝つには、「修羅の庭」の者の力をどうしても利用しなければならない。 他の部隊はそれに失敗したが、我が187警にはそれができると信じている。 どうやらあの時、原田を部隊から弾いたのは正解だったようだ。 大日本帝國に栄光あれ。 天皇陛下万歳。 追伸 原田、生きろ。 ―――――――――――――― 「原田、まだ間に合うじゃないか!」 「何言ってるんですか…この日記の時間からもう30分も経ったんですよ」 「光の輪はな、1回でたら1時間は閉じれないんだよ!!」  少尉は原田の手を強く引いて、側車へと放りこむと、斎藤にこう叫んだ。 「斎藤兵曹、お前はいち早く司令部に戻って応援を呼べ!!歩兵だけじゃなく、戦車に装甲車、陸戦隊の全力を連れて来い!!」 「はっ!!」  オートバイのエンジンを思いっ切り点火すると、さっきにも増したフルスロットルで走り出した。 「タイムリミットはたったの30分、頼む間に合ってくれ!」 「少尉、じゃあ全て知っていたんですね」 「今さっき全て思い出したんだ。俺の名前は今里欣司、陸軍のスパイだ」  運転する少尉を驚愕と疑いの眼差しで見つめた原田であったが、少尉の横顔はその言葉にリアリティを持たせる程、冷静でであった。 「俺は海軍がニューギニアでこそこそ何か嗅ぎ回っている事を不信に思った上層部から内々に調査する様言われていたんだ」 「それが、修羅の庭」 「そうだ、そして俺の海軍での名は…瀬川だ」 「せ…瀬川」
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