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少尉…いや、今里はどこか遠い遠い、哀しい目で全ての真実を語り始めた。
――――――――――――――
俺が175警に居たというのは嘘だ。日記の通り143警で副官をしていた。俺達143警は175警と呉五特の捜索に向かう為と言う名目で、あの修羅の庭を探していたんだ。
当然、捜索するはずの175警や他の部隊は、大半があの化け物に喰われたよ。もっとも俺達は死兵と呼んでいたがな。
そして俺達は死兵の攻撃をなんとか振り切り、当初の兵力の6割を失って、ようやく光の門へと到着した。
6割の部隊損失はすなわち全滅、俺は司令に撤退を進言した。
だが半錯乱、半狂乱の将校、兵たちは異様なまでに突撃を煽り立てた。
あくまで俺は撤退を主張したんだが押し切られたよ…
そして引くに引けなくなった司令は光の輪内部へと突入を命令したんだ。
光の輪内部がどんな風になっていたのかまでは流石に思い出せないが、中に入った事は確実だ。
そして、ヤツと戦闘になったが、一発の弾丸も撃つ事なく143警は一人残らずあの世行きさ。
そして最後まで正常だった司令は最後にあの日記を俺に託した。生きて帰れってな。
命からがらタロトまで逃げて来たが、あの死兵にまた襲われ、死を覚悟した俺はたまたまあった西川原の墓に最後のページを埋め、村に逃げ込んだ。
後は友軍を探して歩いてたらお前と出会った。
――――――――――――――
「これがあの時、俺の遭った全てだ」
「少尉…」
「見ろ、あれが光の輪だ」
ハッとして正面を見ると、1キロ程先に不思議な光を放つ巨大な輪がそびえ立っていた。
見れば見るほど本当に吸い込まれそうになる身体の違和感と共に原田は何故か懐かしさを感じていた。
「あれが…光の輪」
「そうだ…電探にも偵察機の写真にも写らず、その姿を一度見た者は吸い込まれる様に消滅してしまう。神の領域への入口だ」
オートバイは唸りを上げて一気にその光の輪へと突っ込んで行く。
「原田、掴まってろ舌噛むぞ!!」
もの凄い光の引力にオートバイが引き寄せられる。特に原田の乗る舟は異様なまでに軋む音が聞こえ、いつぶっ壊れてもおかしくなさそうだ。
「いっけぇぇぇぇ!!」
今里は一思いにエンジンをふかし、全速力で光の輪へと突っ込み、消えていった。
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