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「こんな時、どうしたらいい…」
何か無いかと背嚢を漁って出てきた使えそうな物は手榴弾位であった。
「いや…待てよ」
原田は背嚢の外ポケットから日記を取り出すと一心不乱に現状と似た状況の記事を探し始めた。すると、驚くべき事に巧みに偽装されたコンクリート陣地の事が記載されていたのだ。
――――――――――――――
8月17日 曇り
密林捜索中に敵偽装掩体より猛烈な射撃を受く。
その射撃正確にして当隊員二名戦死す。
その後、掩体沈黙し、制圧に向かった堀内と言う水兵長、敵兵により惨殺さる。
機銃弾飛び交う中、当隊隊員の肉薄により掩体爆破するも敵の遺棄死体有らず、爆破直前に逃走の可能性あり。
しかし、掩体内多数の血痕あり。相変わらずの奇妙さなり。
夜にはヤシの葉を丸めてタバコ代わりにする。案外味はよい。
――――――――――――――
「これだ!!」
日記を閉じ、手榴弾のピンを抜くと、跳ね起きてコンクリート陣地へ向かって走り出した。
敵もそれを待っていたかの様に原田に雨霰と弾を降らす。おまけに何故か機銃音が重なって聞こえてくる。
「畜生、二つに増えてる!」
恐怖を拭って死角に入ると手榴弾を機関銃目掛けて思いっきり放り込んだ。
ドンと言う鈍い音が聞こえ、機関銃の射撃は止まった。まさに日記の通りであった。
「ふぅ…ふぅ……」
原田は恐る恐るコンクリート陣地の中を覗くと、どうやら誰もいない様子であった。
更に陣地の裏に回り、一か八かで飛び込むと、やはりそこに敵の姿はなかった。しかし、銃眼一帯にベッタリと血糊がついている事に原田は気が付いた。
「これも日記の通りだ…」
陣地内はニューギニアとは思えぬ程ひんやりしており、原田は君が悪くなり早々に外に出ようとした。
「まったく、たまんないよ。ん?」
原田は陣地から出ようと梯子に手を掛けた時、あることに気が付いた。機関銃が米軍でも豪軍のものでもなかったのだ。
「これどっかで見たような…確か教科書の挿絵だったはず」
「ロシア製のマキシムだよ」
「あ、それだ!……え?」
陣地の外から誰かの声が聞こえた。原田はボルトを引くとそっと梯子を登ってスコープを覗いた。
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