光の輪

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 日本軍人にとって隊の壊滅は己の死に直結する。殊に将校だけが生き残る事は良しとされない風潮にあった。  そして、その将校の強い精神力と決死感、隊と兵員の強い(強制的な)結びつきがどの大国の軍よりも小国の日本軍が精強であると言われる一つの所以である。  それが故に原田は一人生き延びてしまった少尉の不幸を恨み、そして嘆いていたのだ。 「あの少尉は野営地に着いたとしても、またすぐに激戦地に送られる…僕にはそれが分かる」  少尉に教えてもらった道を足を早めて進んで行ったが、だんだん空から太陽が消え、ついには暗闇になってしまった。夜がきた。  原田は本にジャングルと砂漠の夜ほど恐ろしいものはないと昔読んだ本に書いてあったことを思い出し、異常な恐怖に刈られていた。 「突撃くらいおっかないよ…」  火を焚けば野生の生き物を寄せ付ける事はないが、敵に居所を悟られてしまう。 「だからと言って、火を焚かなければ蛇だ蜘蛛だが寄ってくるしなぁ…」  しばらく考えた結果、火を焚かずに、自分の回りに小銃整備用の油を撒いて寝ることにした。そうすれば蛇や虫来なければ、敵にも気付かれないと考えたのだ。 翌朝――  原田はけたたましい機銃音と爆音で目を覚ました。飛び起きて辺りを見渡すとタロトの方角からもうもうと煙が立ち上っているのが目に飛び込んできた。  急いで背嚢を担ぐと、銃にスコープを付けてタロトへの道を急いだ。原田は、タロトにもしもの事があれば重要な手掛かりを無くすことにもなりかねないと考えていたのだ。 「何だこれは…」  原田の急ごうとする足が思わず止まる。それも無理はない、今原田の目の前に広がっているのは緑一面に覆い被さるような何十、いや、何百もの死体の山だったからだ。  死体は主に豪軍と米軍だったが中には原住民も混ざっていた。死因の殆どが機銃による外傷だったが、ほんの一部例外もあった。  それは、体の皮が剥がされている死体の事だ。 「ヤバい…これはヤバいって」  額からは滝の様に汗をかき、足は、その足取りがおぼつかない程、震えだしていた。  正面には既にタロト村の家と思われる物がポツリポツリと見えていたが、原田はどうしても進むことができなかった。
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