遺言

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当夏のお爺さんは13年前、謎の変死を遂げた。 高圧電線に触れたように感電しているのに、焼け跡は見つからない。 しかし、怪我は無いのに血が出ている。 毒物の検出もされなかった。 そしてお爺さんは血塗れの手で、コンクリートに『後ろに気を付けろ』と書いて死んだ。 それが悲しかった。 しかしお婆さんはお爺さんの遺体を見て、涙を流しながら呟いた。 「このバカ、あれほど『後ろには気をつけろ』と言ったのに……」 お婆さんの年齢は若く見える。 50代前半なのに30代後半の様に若々しくて美人だ。 しかし何故か、その時のお婆さんは年相応に見えた。 結局、遺言の意味も分からず、死因も不明。 自殺か殺人かもわからないまま、事件は迷宮入りした。 「当夏、お爺さんの様に『楯突いて』はダメよ。『長いもの』には巻かれなきゃ」 そう言っていたのが印象に残っている。 あたかもお爺さんの死因を知っているかの様な口ぶりで。
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