遺言

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それから13年。 人々からはもう変死事件の事など忘れられているだろう。 御首当夏は潮宮中学校に通う中学3年生。 受験が忙しくなってくる頃に彼女はやって来た。 夏休み前だ。もう夏休みまで3週間を切っていると言う微妙な時期に転校してきた。 「初めまして、上薙叶愛(うえなぎかなえ)です。短い時間ですがどうぞよろしく」 短い時間というのはあながち間違いではないだろう。 しかし、わざわざ『自己紹介』にまで持ってくるか?と当夏は机の上の教科書に落書きしながら思った。 「うん、じゃあ。綾見さんの隣で。綾見ぃ、手挙げてぇ」 「はいはいっー!」 当夏にとっては綾見剣道が苦手だ。ちなみにこのクラスは変わった名前が多い。 剣道とか書いて、゛けんじ゛。他にも当て字を酷くした様な名前があるが、あまり気にしないのが協調性だ。 「よろしく、綾見君」 「おお、よろしくなぁー!」 大きな声で挨拶をする辺りが当夏が苦手にする部分だ。 そして、みんなが騒ぎ出した頃、当夏は聞いた。 上薙叶愛の独り言を。 「もう始まる。 狂った世界の狂乱が」
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