プロローグ

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 秘宝伝説“ハートレスソウル”――  そのお伽噺は、幼馴染みと一緒に、村長から何度も聞かされたものだった。  だから、物覚えがあまりよくない私でも、そのお伽噺だけは身体の一部のように、はっきりと覚えている。  ……その時はまだ、無関係だと思っていた。私はごく普通の女の子で、村から出る事もないのだろうと……  けれど、私は知ってしまった。世界はあまりに未熟で、そこに住まう人達は、他人と分かり合う事を恐れ、争ってしまっているという事実を。  始まりは、いつの頃だったか。私が山道付近にある湖で、休息をとっている時に、“彼”に出逢った事がきっかけだったのかもしれない。  ただの偶然が、まさか、世界の命運を分けるものになるだなんて……きっと、誰も想像がつかなかったのかもしれないね。  けれど、私に平穏の時を過ごす事は許されなかった。私はただ、進んでいくしかなかったんだ。  それが、私――エニア=フレンジルが紡ぎ出す、一つの“物語”であったが故に――  
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