異能力者

4/9
前へ
/12ページ
次へ
 興味が無いと言えば、嘘になる。  ただ、俺と銀髪の相棒がこの地へ訪れた理由は、それとは多少の異なりがあるというだけの話だ。  俺達が目指す場所は、村の中心部にある、木造の古屋敷を思わせる邸宅――高さ一・五メートル程はある塀に囲われた中に佇む村長宅。何故、初めて訪れる邸宅がそうであると知っているのかというと、入り口へと通じる道端に、分かりやすく、木製の立て看板が置かれていたからだ。  邸宅の玄関口へ到着するや否や、銀髪の相棒は俺の前へと躍り出て、同様の木製扉を軽く、二回ほど叩いた。 「……どちら様でしょうか?」  扉越しに返ってきたのは、おっとりとしていそうな、ゆったり口調の女性アルト声。それはまるで、俺達の訪れを予期していたかのように、瞬時に反応を示してきたのである。 「こんにちは。アルガスタ=バーンワイド大司教より依頼を請け、参りました者です。オルドナ=リーブ氏にその旨をお伝えいただければ、ご理解いただけると思います」  扉の向こう側にいる人物に対し、相棒は渋味のある――しかし、どこか優しげなテノール声でそう答えた。俺はその後ろで、事の成り行きを見守っている。 「ああ、アルガスタ様の……話は旦那様よりお伺いしております。今、お開けいたしますね」  二度目の返答も、反応は早かった。  口調からして、向こう側にいる人物は、この邸宅の主に仕えるメイドであるようだ。  開かれる扉から現れた、エプロンドレス姿の、栗色のショートカットの女の導きにより、邸宅内へと進入する俺達。メイドは微笑むと、そのまま背を向け、ゆっくりと玄関の通路を真っ直ぐに進んでいく。俺達もそれに続くように、歩みを進めていった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加