異能力者

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 そして、通されたのは、開放感あふれるライトブラウンの床に、天井が白で統一された広い空間。恐らく、応接間かリビングであろうその部屋の奥側にあるテーブルの前には一人――白髪を肩の辺りまで伸ばした老爺が、穏やかな表情でこちらを見つめてきている姿がある。  案内してくれたメイドが、老爺に丁重に一礼し、彼から一メートルほど離れた位置で待機をする。その様子から、この老爺こそが、エトナの村の長――オルドナ=リーブ本人である事が伺える。  俺と相棒は、彼の前まで歩み寄り、一礼をした後に、彼に促される形で反対側の席へと着いた。 「お初にお目にかかります、リーブ村長。アルガスタ様より依頼を請け、参りました――マリク=リュートと申します。隣にいる黒髪の少年は、仲間で――」 「ハルト=アイゼンフォルグだ」  相棒――マリク=リュートが最後まで話す前に、俺はオルドナを見遣り、名を告げる。マリクはチラリとこちらに目を向けた後、その視線をオルドナへと戻した。 「アルガスタ様から話は聞いておる。貴公らは、教皇陛下も注目なさる程に腕の立つ冒険者であるとか」  オルドナは、しわがれた声でそう言うと、品定めを行うかのような眼差しを俺達に向けてくる。  正直、いい気分はしない。 「腕前はさておき、名が知れ渡っている事については、光栄に思います」  対し、マリクは眼鏡のフレームの位置を指で調節しながら、意にも介さないようなフランクさで、そう答えた。
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