異能力者

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「それで、今回、我々がこちらへ赴く事になった理由についてですが……」 「ふむ……」  マリクの歯切れの悪い一言に対し、自身の顎に右手を当てるオルドナ。 「……内容については、流石に、アルガスタ様から聞かされてはおらんか」  その問いに対し、マリクは、無言で頷いた。 「まあ、仕方あるまい。何せ、貴公らに請けて頂く依頼は、極秘のものであるからな。アルガスタ様が慎重になられるのも、当然と言えば、当然……」  オルドナはそう呟くと、頻りにメイドのいる方を見遣る。その意図を理解しているからか、栗色の髪のメイドは、ゆっくりとその場から離れていった。  何かあるのかと思い、それを目で追い掛ける俺ではあったが、マリクに促される形で、視線を正面にいる好々爺へと戻した。 「マリク殿、ハルト殿。今から話す事はどうか、村の皆には内密にして頂きたい。勿論、本国へ戻られても……な」  オルドナは真剣な表情で俺達を見据え、こちらが肯定するまで、視線を逸らす事はしなかった。  何かあるとは、思っていたが……  “聖国クラウレス”の大司教――政権を握る“三賢者”の一人である、アルガスタ=バーンワイド。彼女からの依頼により、俺達は、エトナの地を訪れ、今に至る訳だが、極秘と称される今件に関して、その詳細は聞かされていない。  村長――オルドナの態度や口振りからして、今回の依頼内容は厄介なものに違いない。俺は、深く息をつく彼を見ながら、思考を巡らせていった。
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