Prologue.「歪んだ運命の彼方に」

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『テオドールさん……』 「カティア!?畜生っ、何で動かないんだ!動けぇっ!」 『私……皆さんに出会えて、良かった――』 やがて、ホワイトアウトしていくのがスクリーンだけではなく自分の視界もだと気付いた時には、テオドールとMiG-21の姿は既にベルリンの街から消え去っていた。 テオドールだけではない。第666戦術機中隊の面々が戦術機ごと、最初から存在していなかったかのように東ベルリンから姿を消していたのだ。 時に、新西暦78年。この出来事は「消えた中隊」として後の時代に衛士達の間で半分は与太話として語り継がれていくのだった。 新西暦96年。人類が宇宙に生活の拠点を移し、月と火星の開拓に着手しようと試みて以来、実に1世紀が経過しようとしていた。 旧時代の終わりに建造されたスペースコロニーの完成に伴い、遺伝子操作を施された人類……「コーディネーター」による宇宙移民の実験が成功してからというもの、人類は増えすぎた人口を宇宙に移す事を計画してスペースコロニーの開発と宇宙開発を急速に推し進めていった。 国際連合に加盟する各国が掲げたこの宇宙移民政策は当初こそ棄民政策と評され、国民感情も冷えきっていたが、それは火星に生命を発見してからは好転する事になる。 西暦末期にファーストコーディネーター、ジョージ・グレンが木星で生命の痕跡である化石――「エヴィデンス01」を発見して以降は宇宙生物の存在など数ある噂話の一つに過ぎなかったが、生命そのものの存在を契機に、宇宙開発熱は最高潮に達したといっても過言ではない。 人類は同胞を見付けた事に歓喜し、宇宙に彼等との交流や調査を図るべく巨大宇宙ステーション「世界樹」や宇宙の工場である「プラント」を建造し、人類は来るべき対話に備えた。
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