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それがこの俺なのだ。
だが、ふとした先に、ある絵が見えたのである。
俺と同じ空を描いたそれは、一瞬先生が描いたように見えた。
だが、違う。
その絵を描いているのは女だ。
長髪が、夏に向かってそよぐ風に靡かれている。
その少女の絵は、未完成だが完璧だった。
高校生とは思えない筆のタッチと、色使い。
芸術的こそではないものの、その絵は神秘的だった。
それを見た瞬間、俺のプライドが傷つく。
自分で完璧だと思っていた絵が、あの絵に比べれば劣るように見えてならなかったからだ。
すぐさま、俺は絵を修正する。
何度も、何度も描き加える。
だが、描いても描いてもあの絵が頭から離れない。
徐々にいら立ち始めたその時だった。
「キミ、絵上手だね」
と、真後ろから声が掛かったのである。
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