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もう、虫の息だった。
京の夏特有のじめつく暑さが厭な汗をかかせる。
堪らなくなって、頬を流れる汗を拭った。
しかし、目の前の老人は汗1つかかないのである。
───冷たい。
井草が匂う畳の上に死んだように眠る老人の頬を撫でた。
今まで数多もの戦線を切り抜けてきたであろうその腕には傷痕が沢山残っていた。
威厳があったであろうその眉間には深い皺が刻まれていた。
だが、いつ途切れるかわからない息を吐くその姿はすっかり小さくなってしまっている。
そんな姿を、まだ幼さの残る青年が息を止めてずっと見ていた。
この老人は、青年の数少ない血縁者、謂わば、父親である。
指にじわりと汗が滲んだ。
今日は、一段と暑い。
盆地の地形がそうさせている。
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