29人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、夕飯には真っ黒になった鯵の塩焼きを頂き、すっかり日は落ちてしまった。
「ふぅ。出掛けるかな」
そろそろ、刀がぼうっと青白い光を放ち始めている。
なんだか、宿屋で平和に過ごしてしまったため、本当に今日も何かあるのか?
なんて、当初の予定を見失いかけていた。
───確かに外は厭なくらい静かだな。
外には人一人歩いていない。
そう鉄格子をちらりと覗き、部屋で支度をしているときだった。
からからからから──…
蓮の耳がぴくりと動く。
───何か、聞こえた。
からからからからからから。
そう聞こえた途端、ばっと立ち上がった。近い。
そう思ったも束の間。
「きゃぁぁぁぁああああああ!」
既に階下からは悲鳴が聞こえている。
「くそっ!」
蓮は青白く光る刀を掴むと、下へ階段を駆け降り、中腹地点で飛び降りた。
地面に着地した時には女将が玄関を開け放ったまま柱の前でへたりこんでいた。
涙を浮かべ、がたがたと震えている。
最初のコメントを投稿しよう!