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「どうしたんですか!」
「ばっ…化け物…!」
「貴女は見てしまったんですか!?」
「毎夜毎夜、音がっ、気になって…覗いて、しまった」
女将は隅でがたがたと震えるばかりだ。無理もない。
かちゃりと刀を抜いた。
鞘から光が洩れる。
そして、玄関をゆっくりと出た。
見てしまったなら、斬るしかない。
こいつは、見た者の魂を
───喰う。
蓮はすぐにそれを見つけることができた。
人一人いない暗闇に、からからと車輪の転がる音、それを覆う真っ赤な炎。
ごくりと息を飲んだ。たった1つ、車輪だけが、からからと向かってくる。
それが近づくにつれて、ごうごうと炎で道が照らされた。
───近づいたら、斬る。
そう思っていた。だがしかし、それがこちらを向いた瞬間悪夢を見ることになる。
からり。と、目の前で車輪は止まった。
炎のせいで、宿屋の中まで大きな影が広がっている。
牛車の車輪だろうか。でかい。
「やっぱり…。お前は、最近ここらを荒らしている“輪入道”ですね」
蓮がそう発した瞬間車輪が正面を向いた。ぞっとした。
苦しみに満ちた男の顔が車輪の真ん中についていた。
それだけではなかった。蓮をぞっとさせたのは。
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