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「き、菊次郎!!」
女将は血相を変えて立ち上がった。
流石、女手一つで育ててきただけある。
腰を抜かせていたにも関わらず、息子を思って立ち上がったのだ。
きっと、蓮の予感も、女将の行動も間違いではない。
あれは、菊次郎の足だ。
「何故ですか」
「あん?」
蓮は汗を流しながらも、刀を構えて対峙している。
「貴方達、輪入道は人の魂を食らうだけのはずだ。菊次郎の足を食う必要はない!」
お互いじりじりと対角線上に動いていく。
「いやぁあああああ!き!菊次郎!菊次郎!」
奥の部屋から叫び声が聞こえた。
「ど、どうしたんですか…?」
他に宿泊客がいたようで階段から40代くらいの男が覗いていた。
「こっちを見てはいけません!奥に男の子が倒れています!まだ息があるかもしれない!助けてあげてください!」
「わ、私は蘭学医なんです…!い、一応診ます…!どのような状況ですか…?」
「膝下から切られました!」
「い、急ぎます…!」
男は走って奥へ消えていった。
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