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「何故かって?」
再び輪入道が口を開いた。
にやにやと笑みを浮かべている。
「何が可笑しい」
蓮は輪入道を睨み付けた。
夏の暑さも相乗し、着物の中はじっとりと汗で滲んでいた。
「まずあんたは間違っている。俺はあのガキの足を食ったわけじゃない」
「は…?」
「引きちぎったのさ」
そう輪入道は言うと下品な声で笑いだした。
「どういうことですか」
「だから、俺らは人間の身体は食わねぇんだよ。お前ら人間だって石は食わんだろ。それと同じさ!」
「じゃあなんで…」
益々わからない。
「決まってるだろ?あの女の魂をより旨いものにするためさ」
それを聞いた途端、蓮の頭に血が上った。
「貴様…!」
蓮は大きく刀を振り上げる。間合いが大きすぎたため、輪入道が転がり、刀は届かない。
輪入道が動いた軌道が炎で微かに残った。
「何が悪い!貴様ら人間も同じように、よりうまく食べようと調理したり、惨いことだって平気でするではないか」
「だからって…!」
いや、これは人間の勝手な発言にすぎない。
それでも蓮は刀を振り下ろす。
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