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「え?」
蓮はぽつりと呟いた。呆気なさすぎる。
「う、うわぁぁぁああ!」
輪入道は状況を理解し、喚き散らした。今なら、斬れる。そう思った。
「あんたの周りは火でしょ!なら、水で消せばいいのよ!」
「き、貴様ぁぁあ!」
「菊次郎の…仇よ…!」
女将は殺意の篭った眼で輪入道を睨んだ。
───嗚呼。これだ。
輪入道は口角を急に上げた。
「なんてな!妖怪の火が只の水で消えるわけがないだろう!」
そう言うと、炎が大きく上がり、女将へ向かって、車輪の男の首が一気に伸びる。
そして、女将の首もとへぐるぐると巻き付いた。
「ぐっ…」
女将は眉を寄せ、必死に輪入道の首を剥がそうとするが、ぴくりともしない。
「離しなさい」
蓮は女将を挟んで輪入道にいい放つ。
目の前には首を絞められた女将。その後ろには、首が伸びて、固定された輪入道。
「けほっかはっ…!」
「この女は餌でもあり、人質だ」
「はい…?」
直ぐに食われるよりはこちらとしては好都合である。
だが、状況は優勢とは言えない。
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