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「あんたの刀、何かあるだろ。厭な感じがする」
そう言われ、蓮は青白く光る刀を見た。相変わらず、禍々しい。
───厭だな。
自分でもそう思う。
「さあ?」
蓮はそう答えた。その間にも、ぎりぎりと女将の首は絞められ、呼吸の経路は狭まる。
「何があるのかは知らんが、斬れなければ意味はない。俺を斬るには女将を斬らなければならない。なあ?人質は必要だろう?」
輪入道は一呼吸置くと、瞳孔を開き、にたりと笑った。
「まあ、どっち道、この女は食われるわけだ」
「やめろ…!!」
輪入道が口を大きく開く。
心臓に顔が向かっていく。
蓮は止めようと手を伸ばすが、一歩届かない。
女将は声も挙げられず、目を見開く。
前に話に聞いた男も、輪入道が姿を見せなかっただけで、見えるとこのような光景になるのだろう。
魂というより、臓器そのものを狙っている。
「なんてね」
蓮はにやりと笑った。
そしてそのまま前進する。ぐさり。厭な音がした。
「へ?」
「な…」
女将は目を更に見開いた。
視線をゆっくりと下ろしていく。
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