29人が本棚に入れています
本棚に追加
「若旦那ー。今日はなんでまたここにいるんです?昼にお屋敷にいるなんて、珍しくねぇですか?」
台所から出雲がそう尋ねた。
確かに珍しい。彼らは毎日昼と夜に様子を見に来るのだが、大抵、昼に訪ねても蓮はいない。
「ああ。今日は暑くて暑くて。もう、僕は家から出る元気もなかったのですよ」
「そりゃあ大変だ」
ちなみに、彼らはこの屋敷の離れに住んでいる。
母屋と離れだから、同じ敷地内なのだが、如月家は広大な敷地を誇るため、中々に距離がある。
と言っても、徒歩で10分も掛からない程度なのだが。
「若旦那。残念ながら、この暑い中、出掛けなければなりません」
畳にへばりつくように寝転がる蓮は雨音が食事を持って来たのが見えた。
蓮はものすごく厭そうに眉を寄せるが、効果はなさそうだ。
「どうぞ。お召し上がりながらで良いので、お聞きください」
雨音は食事を運ぶと蓮の前に置いた。
余程腹が減っていたのか、蓮は直ぐに手を合わせると昼食を取り出した。
世話係も兼用しているため、こういうことも彼らの仕事である。
「うん。やっぱり雨音の作る食事は美味しいです」
そう蓮がにっこり笑うと雨音は顔を赤らめ、頭を下げた。
「何照れてんだよー!」
出雲はそんな様子ににやつきながら雨音の肩を叩いた。
雨音は五月蝿い。と出雲を叱咤すると、刀の柄を握った。ぎらりと刃が光るのが見えると出雲は慌てて頭をへこへこと下げた。
最初のコメントを投稿しよう!