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「父上っ」
「蓮よ。案ずるでない」
老人に制され、青年は静かに頷いた。
そして、老人はそれを出した。
刀だ。不思議な気を放つすらりと細長い刀を、きぃと音を立てながら鞘から抜いていく。
───知っている。
青年は老人がそれを使っているのを何度か見た。
小乱れの刃紋、きらりと金筋が光り、そして、佩表には「安綱」二字銘。
白銀に輝くそれは、姿を現した。
「蓮。お前にこれを、授ける」
そう渡され、初めてそれを手にした。不思議と軽い。
「それは、如月家が代々受け継ぐ刀。将軍家からの頂き物。名を“童子切安綱 ”と言う」
「童子切…安綱…」
青年は呟くとまじまじと刀を見つめた。禍々しい何かを感じた気がした。
青年はあまり、この刀が好きではなかった。
もはや、それが放つ気は、妖刀のそれと同じなのである。
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