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「これは昔、かの有名な酒呑童子の首を刎ねたとされる刀。如月家にしかそれは扱えない。だから」
だから、自分がいなくなる今、息子である青年に託すと言うのである。
青年は知っていた。
扱えないの意味を知っていた。
この刀、一見上等な刀に見えるが、その真の力を発揮するのは、昼から夜に変わる間。
つまり、逢魔時からなのである。
逢魔時になると、刀は青白く光る。
そして、何も斬れなくなる。
ただ一つ、「妖」を除いて。
童子切安綱は対妖用の刀であり、そのためだけにあると言っても過言ではない。
この如月家もそう。
幕府直属の対妖専門の一家なのである。
そして、この青年がいま、如月家唯一の当主になろうとしている。
「蓮。お前がこれで戦うのだ。お前が、守るのだ」
「はい。父上」
老人の目は優しく弧を描いた。
そして、白銀の刀を握る、青年の幼い瞳に光が宿った。
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