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「そうよ。如月さんとはもう、10年以上の付き合いなんだから。いいじゃない」
店の調理場の暖簾が上がって、仲からお茶を持った女の人が現れた。
蓮とそう変わらない、女性としては高身長なのだが、竜之介が人並み以上にでかいためそれもあまり目立たない。
「こいつの将来が俺ぁ心配なんだよ!」
「あら。すっかりお父さんじゃない。はい。如月さん」
そう竜之介を茶化すときゅっとつり上がった目を下げて笑った。そしてそのまま蓮に茶を渡す。
「誰がこいつの父親だ。俺はまだ30代だよ。こんなでかい息子はいらねぇ」
「あたしはいつでも大歓迎だからね」
目の前の夫婦は楽しそうに笑った。竜之介とこの女性、お蘭は夫婦である。
そして、ここはこの夫婦が営む町の小さな蕎麦屋だ。
暖かいほうじ茶からはふわりと心を落ち着かせるような匂いが香った。
目の前の二人は仕事を忘れ、談笑し始めた。
───ここは居心地が良い。
蓮は小さく笑うと茶を啜った。
蓮が先代から刀を継いでからの付き合いなため、もう気の置けない仲である。
竜之介はああいったが、お互いに家族のように感じている。
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